王国という番組があった。
テーマ曲は女性の二人コーラスで、
最後の盛り上がりの中、全力で走るカンガルーのアップが、
スローでフレーム一杯に映し出されるオープニングの最後の方は、
今も思い出せる。
ナレーションは当時、
素晴らしい世界旅行でもその他の番組でも、
とにかく良く聴く声であった久米明氏。
関係ないけれど、素晴らしい世界旅行は、
エンディングに次回予告が入った。
久米氏がテーマ曲をバックに
「裸族の一生、ご期待下さい」とか言い終わるとすぐ、
「この木何の木気になる木♪」が流れて、
あー日曜が終わってしまうと寂しくなったから、
何だかセットで切ない思い出の声でもある。
野生の王国では、影絵の様な映像が流れる事があった。
今と違って感度もそう高くないフィルム。重い機材。
そんな中で苦労して撮ったものなのだろうと今は思う。
そんな時は決まってナレーションがなく、
そのお陰で動物の動きから、
何と言うか駆け引きや心の動きが良く分かり、
子供心に必死に観たのを覚えている。
で、唐突ではあるけれど、
日本人の一番身近な野生動物は、
有る意味野良猫ではなかろうか。
やつら俊敏で機知に富み、街中でも郊外でも、
逞しく暮らして、逞しく子を産んで、逞しく育てる。
同じ猫でも家の中でぬくぬくとしている奴らとはまるで違い、
いくら気持ちの良い日なたにいても、決して油断する事はない。
と、思っていたけれど、
昨年末の花園の夜で救われた翌日、
こいつにもまた救われた。
よく見ると、指で電線を挟んでいる。
うちの猫が何だかじっとというか、心配そうにというか、
何かを見つめているからその視線を追ってみたら、
こいつがこんな事になっていた。
時々、今も元気にしているといいなと思う。