好きだ。
我が家の風呂はコント並みに狭いのだけれど、
寒い日にバブや何かを入れた浴槽に浸かると、
それでも、あぁ日本人で良かったと思う。
勿論でかい風呂に入りたければ銭湯に行く。
先日、またしても三茶の清水湯まで遠征した。
ここでも良く書いている清水湯は、
やはり古くて清潔で気持ちが良かったし、
久々に逢った洗濯屋の爺さんは、股引とブリーフを膝まで降ろしたまま、
今回も孫の話を顔をくしゃくしゃにして聞かせてくれた。
ピーターバラカン氏が世界に勧める姿は、
何となしに切ない東京の銭湯であるけれど、
ここに来て廃業のピッチが上がっている様だ。
先日、アイドル篠と呑んだ後、
酔った勢いで永福町の銭湯に行ったら、そこも廃業していた。
浴室内にテレビがあり、露天風呂もある不思議な風呂屋だったけれど、
この3月に閉じたのだと、人相の悪いお巡りが教えてくれて、
「何人も聞きに来るんだよなぁ」と言った。
残念な話だ。
と、ここまで書いて猫の話なのである。
たまに風呂好きな猫の動画や画像を見るけれど、
うちのは水が嫌いで、しぶきがかかっただけですっ飛んで逃げる。
そのクセに風呂で遊ぶのが好きで、夏の暑い頃にはタイルで涼み、
調子に乗って走り回って色んなものを落とし、
その音に驚いてまたすっ飛んで逃げる。
今年は掃除をマメにせよ、玄関と水回りは清潔にせよ、
と、風水に目覚めたあの人に言われた言葉に従い、
部屋の掃除をテッテ的にやって綺麗にした後、
風呂の残り湯で洗濯機を回したまま、台所の掃除をしていた。
ら、タッポーンと遠くで音がした。
なにかいなと思いながらも、一度止めた手を動かし始めた刹那、
だだだっと、おかしなモノが走って来た。
顔と首だけは猫だけれど、そこから下はハリネズミの巨神兵みたいで、
あまりにも細く情けなく、後ろ脚に至っては、
クリスマスのお楽しみ、鳥のもも肉風味。
思わず大笑いをしてしまった。
目を見開いて、明らかにテンパッた顔の彼女は、
さっき綺麗にした寝室も茶の間も台所も玄関も、
まんべんなく丁寧にびっしょびしょにしてくれて、
さっき洗いたてに代えたばかり、後は寝転がるだけだった、
ホットカーペットのカバーも染みだらけにしてくれて、
ようやっと僕に捕獲された。
浴槽の中に人の足首ほど残った残り湯に彼女は全く気がつかず、
いつもの様にニャルルルンと鼻歌交じりに飛び込んでしまったらしい。
捕まえてタオルで拭いたら、鼓動がもの凄いスピードになっていて、
よっぽど慌てたんだろうなぁと思う。
タオルで拭き切れなかった所を、小一時間かけて舐めた後、
落ち込んだのか、気まずいのか、暫くは卓袱台の下から出てこなかった。
迷惑だけど飽きないなぁと思う。